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【投稿者】
beachmollusc
【投稿内容】
表題の本、Blackwell、2004年初版で出版された本が昨日配送されて来たので眼を通しました。

網羅的に書かれた地学の教科書(大学の入門レベル)で、読むにはやや退屈するところがあります。しかし、地形・地質だけでなく、海面変化、堆積学、気候、波と海岸の環境などの基礎を丁寧に説明しています。ただし、アメリカの海岸に特徴的で日本では同様なものが乏しいbarrier islandsやestuariesを大きく扱っていて、沖積平野の海岸については詳しくありません。
海岸は、似たような姿をしていても、その形成過程(地史)や地質、気候、波浪環境などの地域特性を強く反映させていますので個性が豊かです。そのため、この本の中で具体的な事例が多く紹介されていても、日本の海岸についてそのまま参考になるとは言えません。しかし、科学的な共通原理が働いている基礎情報が重要なので、その記述整理がよく出来ているため、役に立つ本であると思います。記述ない様に突っ込みどころは多少ありましたが、現在の定説をきちんと書いていると思います。
日本語で書かれた海岸の科学についての本はかなり古いのしかありません。学問的に注目度が低い分野で、基礎情報の蓄積が乏しいまま、海岸工学分野だけが潤沢な予算を消化しながら独走・暴走して「試行・錯誤」の後半部分を文字通り続けているようです。彼らの書いた論文や本を読むと、海岸科学の基礎部分を飛ばしていることが明瞭です。この本を読んで基礎のおさらいして欲しいと思います。
この本の終わりの2章で、まずcoastal erosion として自然現象としての海岸侵食を説明し、最後のhuman interaction with coastal dynamicsで、人間がこれまで行ってきた海岸の自然に対する干渉行為とその(多くの不幸な)結果について解説しています。
海岸構造物の建設について381-382頁に総括されたコメントを紹介したいと思います。著者らはこの面での発展史を3段階に分け、
(1) exploitation and utilization
(2) development of protection from coastal hazards
(3) preservation and attempts to achieve harmony between nature and coastal utilization
三番目の段階に我々が最近到達したとしました。つまり、(2)の海岸防災のための構造物の建設が海岸の自然を結果的に破壊、あるいは改変し、不都合な状態をもたらしたことに対する反省の時代に入ったということです。
この部分の締めくくりに、発展途上国の多くでは、いまだに(1)の段階であり、北アメリカ、ヨーロッパそして日本が犯した「失敗」から学んだ様子が見られない、と言っています。
このように日本が引き合いに出されています。たしかに、最近では自然に配慮するようにと名目だけは付け加えています。しかし、その実態は、反省の反対方向に突き進み、(「自然にやさしい」と称される「階段護岸」が象徴するように)、さらなる環境改変と自然破壊を進める(防災?)事業の予算獲得の口実にされているにすぎません。このような日本の実態を、本の著者達が詳しく知らないようですが、もし実際に日本に見に来たら仰天するでしょう。(2)の段階のままで暴走を続ける日本の海岸ですから。
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