Beaches and Coasts by R. A. Davis Jr. and D. M. Fitzgerald
投稿日時:2008年11月27日 09:45投稿日時:2008年11月27日 09:45
カテゴリ:その他

【投稿者】
beachmollusc

【投稿内容】
表題の本、Blackwell、2004年初版で出版された本が昨日配送されて来たので眼を通しました。

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網羅的に書かれた地学の教科書(大学の入門レベル)で、読むにはやや退屈するところがあります。しかし、地形・地質だけでなく、海面変化、堆積学、気候、波と海岸の環境などの基礎を丁寧に説明しています。ただし、アメリカの海岸に特徴的で日本では同様なものが乏しいbarrier islandsやestuariesを大きく扱っていて、沖積平野の海岸については詳しくありません。

海岸は、似たような姿をしていても、その形成過程(地史)や地質、気候、波浪環境などの地域特性を強く反映させていますので個性が豊かです。そのため、この本の中で具体的な事例が多く紹介されていても、日本の海岸についてそのまま参考になるとは言えません。しかし、科学的な共通原理が働いている基礎情報が重要なので、その記述整理がよく出来ているため、役に立つ本であると思います。記述ない様に突っ込みどころは多少ありましたが、現在の定説をきちんと書いていると思います。

日本語で書かれた海岸の科学についての本はかなり古いのしかありません。学問的に注目度が低い分野で、基礎情報の蓄積が乏しいまま、海岸工学分野だけが潤沢な予算を消化しながら独走・暴走して「試行・錯誤」の後半部分を文字通り続けているようです。彼らの書いた論文や本を読むと、海岸科学の基礎部分を飛ばしていることが明瞭です。この本を読んで基礎のおさらいして欲しいと思います。

この本の終わりの2章で、まずcoastal erosion として自然現象としての海岸侵食を説明し、最後のhuman interaction with coastal dynamicsで、人間がこれまで行ってきた海岸の自然に対する干渉行為とその(多くの不幸な)結果について解説しています。

海岸構造物の建設について381-382頁に総括されたコメントを紹介したいと思います。著者らはこの面での発展史を3段階に分け、
(1) exploitation and utilization
(2) development of protection from coastal hazards
(3) preservation and attempts to achieve harmony between nature and coastal utilization
三番目の段階に我々が最近到達したとしました。つまり、(2)の海岸防災のための構造物の建設が海岸の自然を結果的に破壊、あるいは改変し、不都合な状態をもたらしたことに対する反省の時代に入ったということです。

この部分の締めくくりに、発展途上国の多くでは、いまだに(1)の段階であり、北アメリカ、ヨーロッパそして日本が犯した「失敗」から学んだ様子が見られない、と言っています。

このように日本が引き合いに出されています。たしかに、最近では自然に配慮するようにと名目だけは付け加えています。しかし、その実態は、反省の反対方向に突き進み、(「自然にやさしい」と称される「階段護岸」が象徴するように)、さらなる環境改変と自然破壊を進める(防災?)事業の予算獲得の口実にされているにすぎません。このような日本の実態を、本の著者達が詳しく知らないようですが、もし実際に日本に見に来たら仰天するでしょう。(2)の段階のままで暴走を続ける日本の海岸ですから。

この記事へのコメント:2件 関連記事(トラックバック):0件

KHさんのコメント(2008年12月01日 21:49)

beachmolluscさま

> しかし、地形・地質だけでなく、海面変化、堆積学、気候、波と海岸
> の環境などの基礎を丁寧に説明しています。

> 学問的に注目度が低い分野で、基礎情報の蓄積が乏しいまま、海岸工
> 学分野だけが潤沢な予算を消化しながら独走・暴走して…

何故海岸工学の分野に潤沢な予算があるのか。
海岸工学の分野(学識、専門家含む)は、国交省とうまくやって行かないと、分野そのものが成り立たないのでしょうね。海岸整備事業において創設される○○委員会は、ほとんどの場合、海岸工学系の学識者が委員長に就任。(委員は止むおえませんが)

地形、地質、堆積学の学識者は、国(予算提供元)との繋がりがないし、
電気、電子、情報工学の学識者は、国との繋がりはほとんど皆無。
文系学識者は論外です。

> このような日本の実態を、本の著者達が詳しく知らないようですが、もし
> 実際に日本に見に来たら仰天するでしょう。

一つの突破口として
見に来てもらう方法、何かないですかね。

関連URL:
beachmolluscさんのコメント(2008年12月03日 09:47)

海岸工学の国際会議が定期的に開かれていて、日本でも開催されているようです。
2003年には幕張でAsian and Pacific Coasts 2003という国際学会があって、立派な報告集が出ています。Goda, Yoshimi / Kioka, Wataru / Nadaoka, Kazuo (編集) World Scientific 出版
Asian and Pacific Coasts 2003, Proceedings of the 2nd International Conference, Makuhari, Japan 29 - February - 4 March 2004

さらに新しい本がありますが、これも国際学会でしょう。本が高価なので買うのをためらっているところです(情報価値が十分あるかどうか、コストに見合うかどうか、わからない)。Nobuo Mimura 編集:
Asian-Pacific Coasts And Their Management: States of Environment (Coastal Systems and Continental Margins)

国際会議で日本に来た研究者や技術者が日本の現場を詳しく見ることが出来るように見学のガイドツアーをやれば、交流と理解が深まるでしょうね。ただし、日本の技術関係者は一般に英語が弱そうですから、なぜこのような日本独自の海岸工学文化を発展させたのか、相手が納得できるように説明できないでしょうね。

ところで、2003年の会議で報告された中で、熊本県天草の白鶴浜の砂浜の無様な姿について詳しい論文がありました。

このようなポケットビーチでも変な構造物を造ると浜の景観がめちゃめちゃになり、ウミガメの産卵場所もなくなるというケースです。この報告が出た後の更なる変化を、最近、現地訪問して実際に見てきました(わがブログに掲載しました。
http://beachmollu.exblog.jp/7414032/

報告の著者達の提言に従って突堤やその他の海岸構造物をさらに強化したようですが、現場はさらに悪化していたと思います。

白鶴浜という九州西岸では極めて少ない豊かな砂浜の生態系は全く無視され、無機的な人工ビーチと何も変わらない海水浴場とされただけでした。

コンクリートで砂浜を何とか固めてしまおうとする古いままの海岸工学の精神構造が基本的な問題でしょう。

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