北海道函館市臼尻町の大謀網(大型定置網漁)
投稿日時:2008年06月03日 09:48投稿日時:2008年06月03日 09:48
カテゴリ:ご意見全般

【投稿者】
野村譲

【関連海岸】
北海道函館市臼尻町

【投稿内容】
 私は北海道函館市臼尻町で大謀網(大型定置網漁)をやっている漁師であります。私の町は北海道定置網発祥の地であり、縄文の時代の遺跡も数多く発見されている事から、古代から恵まれた漁場である事がわかります。定置網は季節に応じた魚をとっており、ほっけ、マス、いわし、さんま、サバ、イカ、本マグロ、鮭などその魚種は多岐にわたります。
 昨年は私の定置網では近年まれに見る大漁であり、多くの本マグロを水揚げいたしました。水産学会で静岡に訪れた際に清水一の寿司屋を尋ねたのですが、そこのご主人が私の定置網で水揚げしたマグロを築地経由で使っていたと聞いた時は大変興奮いたしました。余所の土地で偶然入った寿司屋で自分のマグロが使われていたと聞くと、自分も日本国の食料自給を助けているのだと実感致しました。
 本年の漁も例年通りに4月から始まり、2ヶ月が経とうとしています。内浦湾(噴火湾)の水温は例年に比べると若干低いのですが先週からカタクチイワシが入り始め一安心しております。今年も良い漁であることを切に願うばかりであります。イワシと言えば七つ星のマイワシを想像されるかも知れませんが、ここ10年前くらいから魚種交代が起こっているのか、マイワシの漁獲が減ってきた代わりにカタクチイワシと言う小降りのイワシが大量に水揚げされています。そして近年では海水温の上昇のせいか夏の時期にブリが網に入る事もあります。そして何よりも驚異なのが秋口から日本近海に出現する巨大エチゼンクラゲです。数年前に私のところの海でも大量に発生した巨大エチゼンクラゲが押し寄せ漁に多大な打撃を受けました。クラゲが網にはいると、網の中の魚がクラゲの毒によって傷み、商品にならなくなってしまいます。そしてエチゼンクラゲは直径1メートル以上もあり、重さも100キロを越える事もあり、その重さで網が破れてしまう事が一番の問題なのです。数年前にクラゲがきたときは9月から12月までの3ヶ月で洋上において2,500トンも破棄いたしました。
 昨今は地球温暖化、海洋汚染など様々な事が原因となり、日本近海での沿岸漁業の漁獲量の激減により操業が大変な事になってきております。元来、漁業は自然に任せたままで、海洋環境が健全であれば自然の浄化能力のおかげで漁をする事が出来ました。農業の様に地道な人間による努力を必要とする物が最小限である代わりに命を賭けるリスクがあります。そして沿岸地域の人口が増え、あまりにも海洋環境を顧みない護岸工事、都市化に伴う海洋汚染、乱獲を続けてきた結果、今の沿岸は疲弊しきってしまいました。自然環境の修復には莫大な資金と時間が必要であり、長期的な視点から計画を立てていかなければ難しい物だと認識しております。今の状態が続く限り、今日より明日、海が清浄になった事はない。何か手を早急に対策を打たなければ大変な事態に至る。日本国の食糧自給の要でもある沿岸漁業の衰退は、漁師の後継者問題だけに止まらず、食糧自給率問題にも影響を与え、そして情緒ある日本沿岸の漁村風景も破壊してしまうものであります。四海に囲まれた海洋国である日本は海洋環境にもっと目を向け海洋立国とならなければなりません。まずは我々漁業者がもっと海洋・沿岸環境にもっと目を向け無ければならないと思慮しております。
 是非、海岸研究会の先生方、私どもの海岸にいらしてくれませんか?先生方を迎えて漁業者への啓発ワークショップを開催したいと思っております。ご検討のほどよろしくお願いいたします。

この記事へのコメント:3件 関連記事(トラックバック):0件

竹村公太郎さんのコメント(2008年06月03日 10:47)

野村さま
ご無沙汰しております。大分の第1回アジア・太平洋水サミットへご出席ありがとうござました。野村さんの定置網は原油が高騰し遠洋漁業が苦況に落ちる中、注目が高まって来ております。現在、東京で「水の安全保障」の研究が行われていますが、その中でも定置網が取り上げられていますし、海環境の定点観測でもあります。
ワークショップへのお誘いありがとうございます。皆さんで議論します。

関連URL:
小島あずささんのコメント(2008年06月03日 11:43)

野村さま
函館の海についてのご投稿を、興味深く拝見いたしました。長年漁業に携わってこられた方ならではの感動や日本の漁業の未来についてのご指摘には、なるほどなあとうなづくばかりです。
先日日本海の島の方からも、地球温暖化の影響によると思われる魚種の変化などを心配されるお話を伺いました。
健やかな海あっての私たちの暮らしであることを、さまざまな立場の方たちといっしょに再認識すべき時なのだと感じています。またお目にかかれる機会を楽しみにしております。

関連URL:http://www.jean.jp
Satoquo SEINOさんのコメント(2008年06月04日 00:42)

いつも、浜からの活発な発信をどうもありがとうございます。

昨年秋の、臼尻でのワークショップの際の見学で、定置網にどっさりのエチゼンクラゲには、憂鬱になりました。

イカの肌に、クラゲのちくちくの跡があるのも、とてもイカがかわいそうでした。

それにしても、沿岸漁業に緊迫した事態が続いているのも、なんともいいがたい気持ちです。

定置網のネットワーク、是非つくっていきたいですね。

先日、某漁連関係の方々とお話したときに、沿岸漁業はがんばりようによるんであって、駄目だ駄目だといっていると本当にダメになってしまう、というお話でした。

日本の海岸や沿岸漁業が、構造的にどうダメなのか、は、そろそろ日のあたるところで、多くの人が議論したほうがいいと思います。

ええええええ、という驚きは、きっと何かを変えると思います。

だって、日本の人々が、日本から漁師さんがいなくなっちゃっていいなんて、思ってないと思うんですけどね。

ぜひ、研究会で、啓発されに伺いますので、夏、よろしくお願い申し上げます。

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